2010年04月10日

小林可夢偉の文藝春秋への寄稿文

Kamui Kobayashi

BMWザウバーのドライバーとして臨むF1の新シリーズが始まりました。チームのレギュラードライバーでシーズンを迎えたのは僕にとって初めてのこと。記念すべき1年になりそうです。

小さい頃から車が大好きで、遊園地に行っては1日中ゴーカートで遊んでいるような子供でした。不思議なことに家族は誰も車に興味がありません。僕はテレビで見たレーシングカートがおもしろそうで、親に頼みこんで9歳でカートを始めました。あまりはっきりした記憶はないけれど、とにかく楽しかったことを覚えています。10歳でレースに出場するようになると、勝てば勝つほどおもしろくなってすっかりハマってしまいました。とはいえF1はまだまだ遥か遠くの世界。テレビでレースを見ることもほとんどなくちらりと考えても「いや、英語も話せない自分には無理やろうな」と、ドライバーになることなど想像もしていませんでした。

転機となったのは、2001年に14歳でトヨタのドライバー育成オーデションに合格したことです。それまではいってみればただの趣味だったカートが、レーシングスクールでは仕事のようなもの。厳しいトレーニングや英語の勉強もしなければなりません。180度違った世界で鍛えられました。

18歳からトヨタ・ヤングドライバーズ・プログラムを受けながら四輪のレースでヨーロッパを転戦すると、F1がぐっと身近に感じられるようになりました。当時はアロンソやシューマッハが鎬を削っていた頃で、自分もいつかはF1に挑戦してみたいと考え始めました。08年からトヨタF1のサードドライバーになると、GP2(F1の下のクラス)のレースと掛け持ちの生活で肉体的には大変でしたが、夢の舞台に近づいたと嬉しくもありました。

- 省略 -

初戦のバーレーンGP、続くオーストラリアGPは途中リタイヤという散々な結果でしたが、ファンの方には「もう少し待ってください」と言いたい気持ちです。改善点もわかったので、次はもっといい走りをお見せできるはずです。

いわゆる負けず嫌いではないけれど、自分が大切にしているところでは絶対に負けたくない。僕にとってそれがレースです。特定の選手は意識していません。ライバルは常に自分自身。それまでの自分の走りを越え続けたいと思っています。

しんどいけれど、今は充実した毎日を送っています。コンスタントにドライバーズポイントを稼ぎながら、表彰台を虎視眈々と狙っていくつもりです。

小林可夢偉(こばやし かむい F1ドライバー)
文藝春秋 2010年5月号

markzu
posted at 22:44